
収縮負荷による痛みとは?
筋肉は、日常生活や運動時に、無意識力を入れた、抜いたりといった、筋肉の収縮・弛緩を繰り返しています。特に、筋肉が伸びながら力を発揮する【遠心性収縮(エキセントリック収縮)】は、筋肉や腱に大きな負荷をかけるため、痛みの原因となることがあります。このような収縮負荷による痛みは、筋肉の微細な損傷や炎症、神経の過敏化などが関与しています。
収縮負荷による痛みのメカニズム
1.筋繊維の微細損傷:強い収縮負荷により、筋繊維が微細に損傷します
2.炎症反応の誘発::損傷部位で炎症が起こり、痛みや腫れが生じます
3.神経の過敏化::炎症により、痛みを感じる神経が敏感になります
これらの過程を経て、収縮負荷による痛みが発生します
収縮負荷に関連する、最新の研究
1.筋肉の収縮と痛みの関係
人工的に筋肉痛を誘発した研究で、自発的な筋力の発揮が低下する一方、電気刺激による筋力発揮が増加する結果がでました
これは、急性の痛みが中枢神経系を介して筋力発揮を抑制することが示唆されます
これらの結果より筋肉の収縮時痛が出現すると力が入りずらい、重だるいといった症状がでてくることが考えられます
2.電気刺激による痛みの軽減
筋肉に対する電気刺激(EMS)を用いた研究では、EMSによる筋収縮が、刺激を受けた部位の痛みの閾値を上昇させることが確認されました。これは、EMSが局所的な鎮痛効果を持つ可能性を示しています
3.収縮負荷と筋肉痛の予測
スポーツ選手を対象とした研究では、トレーニング中の加速度や高心拍数での運動時間が、後日の筋肉痛の発生を予測する指標となることが示されました。これは、収縮負荷の大きさが筋肉痛の発生に影響を与えることを示しています
収縮負荷による痛みに対するアプローチ
収縮負荷に対する介入として以下の目的に沿ってアプローチを組み立てていきます
1.筋肉の緊張緩和
2.血流の代謝の改善
3.神経系の過敏性の調整
4.再発防止のための運動指導
具体的なアプローチ方法のご説明は以下の通りです
1.手技療法
手技で筋膜の滑走を促進し、筋収縮により硬くなった筋肉の柔軟性を向上させます
2.ストレッチと関節モビライゼーション
可動域の改善を目的とした関節包内運動を助けるストレッチや筋肉の柔軟性を向上させます
3.神経の滑走性を促すモビライゼーション
神経の動きを促し、正しい筋収縮を促す軽い運動を実施します
4.自律神経に対するアプローチ
頸椎に対するアプローチ、腹式呼吸等で副交感神経を活性化させます
5.運動療法とホームケア等の生活動作のアドバイス
再発防止のために筋肉バランスを整える目的で実施します
日常動作の改善指導や自主練習をご提案させていただきます
収縮負荷による臨床的な影響部位とその病態例

アプローチの流れ
①問診、評価(姿勢や動き方、筋力のバランス、痛みの部位や痛む所作の確認)
②徒手療法(モビライゼーションや筋膜リリース等)
③再評価(動き方の変化、痛みの状況を確認)
④自宅でのセルフケアや動作のアドバイス
⑤再発予防の為に気を付ける事をアドバイス
収縮負荷の原因を評価、考察し把握していきます。
*痛みの状況(急性痛なのか慢性的な痛みなのか等)により、積極的なアプローチができない場合や整形外科をお勧めする場合もあります。
【参考文献】
Effect of experimentally induced muscle pain on neuromuscular control of force production.
Impact of electrical muscle stimulation-induced muscle contractions on endogenous pain modulatory system: a quantitative sensory testing evaluation.
Training Load and Current Soreness Predict Future Delayed Onset Muscle Soreness in Collegiate Female Soccer Athletes - International Journal of Sports Physical Therapy.