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子供の身長を支える栄養の科学

シリーズ第2回目になります。

前回は睡眠についてまとめましたが、

・過眠と言えるレベルで睡眠時間をとること

・大切なのはレム睡眠を誘発するような環境が大切(ゲーム・スマホ・生活リズムなど)

がわかりました。

ただ、もちろん睡眠だけでは身長は伸びません。同じぐらい大切なのが【栄養】になります。

本ブログでは栄養に焦点をあてて、最新論文を参考により具体的にまとめていきたいと思います。

 

 何を・どれだけ・いつ食べるかで成長は変わる 

 

「身長は遺伝だから、食事で変わらない」

そう思われがちですが、これは半分正解で半分誤りです。

確かに最終身長の大枠は遺伝で決まります(7割は遺伝)。

しかし、

・伸びるはずだった身長を最大限引き出せるか

・成長期にブレーキをかけてしまわないか

 

この差を生む最大の要因が、成長期の栄養状態です。

本ブログでは、最新の国際論文・小児内分泌・スポーツ栄養学を基に、

・身長と栄養の本当の関係

・不足すると「確実に伸びにくくなる栄養素」

・具体的に食べたい食材・料理、

・3食+補食の考え方と量の目安

を、医療職の視点で徹底解説します。


1. 身長は「骨」だけで伸びているわけではない

まず大前提として重要なのは、

身長=骨の長さだけで決まっているわけではないという点です。

 

成長期の身長増加には、

・成長ホルモン(GH)

・IGF-1(インスリン様成長因子)

・骨端線(成長板)の軟骨細胞増殖

・筋・内臓・血液量の増加

といった全身の代謝活動が関わっています。

 

栄養不足は

これらすべてを 同時に鈍らせるため、

「じわじわと成長を止める」結果になります。


2. 栄養不足が起こす“見えない成長ブレーキ”

 

特にスポーツをしている子どもに多い問題

・食べている「つもり」

・体格は痩せすぎていない

・練習量が多い

 

しかし実際には

消費量 > 摂取量

になっているケースが非常に多いです。

しっかり食べている、なんなら大人より食べていてもこのような状態が起こります。

 

この状態を

相対的エネルギー不足(RED-S) と呼び、

成長・ホルモン・骨形成に悪影響を与えることが

スポーツ医学分野で問題視されています。

 


3. 身長に直結する最重要栄養素ランキング

第1位:エネルギー(カロリー)

 

最も見落とされがち、かつ最重要な栄養素です!

 

エネルギー不足→ 成長ホルモンが分泌されても「材料不足」で使えない状況になります。

「栄養は足りているがカロリーが足りない」ケースが多いし、実際にスポーツ現場でも多く見受けられます

 

まず“量”が足りなければ、質を語る意味がありません。

 

ちなみに、厚生労働省の“日本人の食事摂取基準(2020年)”では身体活動レベルⅢ(移動や立位の多い仕事、または活発な運動習慣がある)が1日に必要なカロリーが以下の表になります。

*あくまで目安です。スポーツの種類によって、これ以上のカロリーが必要な場合が多いと個人的には思います。

*大前提にお菓子やジュースのカロリー以外で摂取したものです。

この表ぐらいのカロリーを摂取するには、どのような食べ物を食べるといいのでしょうか?

以下は食材Naviより引用した図です。

極論ですが、小学生男子の場合、カルボナーラ、オムライス・カレーを3食で食べる必要があります。

さらに運動後にも補食があってもいいでしょう。


第2位:たんぱく質

 

流行りといってもおかしくはない【たんぱく質】

 

ではなぜ重要なのでしょうかか?

 

・骨端線の軟骨

・骨基質

・筋・内臓

これらすべての材料が“たんぱく質”です。

 

たんぱく質が多く含まれる食材が以下となります↓

 

成長期、かつ運動をよく行う人の1日の摂取目安量は

 

体重 × 1.2〜1.5g / 日 となります

 

体重30kgであれば → 36〜45g / 日を取る必要があります。

なんだかんだ、それなりに摂取しないと1日の目安を食事で摂ることは大変なことがわかります。


第3位:亜鉛

 

あまり聞き慣れない栄養素ではありますが、亜鉛は医学的に最重要な微量栄養素の一つと言われています。

・IGF-1活性

・細胞分裂

・成長遅延との関連が多数報告

 

亜鉛不足は「身長が伸びにくい体内環境」を作ります。

 

日常的に亜鉛が不足すると、亜鉛欠乏症になってしまうリスクがあります。

亜鉛欠乏症とは、体内の亜鉛が不足することで発症し、皮膚炎、口内炎、脱毛、発達障害、味覚・嗅覚障害など、さまざまな症状を引き起こす疾病です。

亜鉛は人の身体を構成する元素の中で、極めて少量しか存在しない重要な微量元素であり、骨や筋肉、肝臓、腎臓など、全身に分布しているといわれています。

 

子供が亜鉛が不足する理由として、偏食やファーストフード中心の食事、加工食品の普及が挙げられます。

亜鉛は肉類や魚介類などに多く含まれています。また、食物繊維や青菜に含まれるシュウ酸は亜鉛の吸収を阻害するため、肉類や魚介類を食べないベジタリアン、ビーガンなどは不足しやすいと言われています。亜鉛の吸収を阻害する食品添加物を含む加工食品やレトルト食品も、亜鉛不足を招くと言われ、可能であれば毎食は避けたいところです。

 

もちろん共働き世帯で加工食品を避けるなんて、私は考えられません。だって楽だし・・

なので、どちらかというと偏食の予防(食べやすい味や食材がわかりにくくなるような料理など)を意識し、ファーストフードは子供に人気ではありますが、ご褒美に食べに行く等もありかと思います。

 

亜鉛を多く含む食べ物が以下になります↓


第4位:鉄

 

鉄は主に

・酸素運搬

・エネルギー代謝

・疲労回復

等に関与しており、特に

〇成長期

〇スポーツ

〇女子

では不足しやすいと言われています。

 

鉄分が多く含まれる食品が以下となります↓

 

 

スポーツ現場では主に貧血に関わることが多いです。

 

一般に貧血とは、血液中の酸素が不足して起こります。血液の成分の一つである赤血球に含まれるヘモグロビンはヘムという鉄とグロビンというたんぱく質でできており、肺で取り入れられた酸素はヘムと結合して全身に運ばれます。体内の鉄が不足して起こる貧血を「鉄欠乏性貧血」といい、多くはこの鉄欠乏性です。

 

 

 

貧血の指標となるものには、ヘモグロビン濃度とヘマトクリット値があり、成人女性ではヘモグロビン濃度12 g/dl以下、ヘマトクリット値36%以下、成人男性で 同じく14 g/dl以下、 41%以下で貧血と診断されます。貧血になるとより酸素を多く全身に届けようと脈が速くなり、眼瞼結膜(図1)が白っぽく、なかにはスプーンのように爪の中央部分が凹んで反り返るスプーンネイル(匙状爪)(図2)という状態になる人もいます。

*子供の場合血液検査はアレルギー検査等をしないと実施しないこともあり、目の周りや爪の状態を確認してあげるといいかもしれません。

 

ただ、貧血または貧血気味の人が運動をすることで誰もが「スポーツ貧血」になるわけではありません。スポーツ貧血とは激しい運動をすることで起きる貧血で、足の踵を打ちつける衝撃で赤血球が壊され、ヘモグロビンが血球外に溶出する「溶血」によって貧血を起こします。昔は「行軍貧血」とも呼ばれ、軍隊で長時間歩く兵隊がよく起こしていたそうです。現代では、陸上の長距離やサッカー、バレーボールの選手など足裏に強い衝撃を与える競技に多いといわれています。

 

スプーンネイル↓

眼瞼結膜↓


第5位:ビタミンD

 

ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一種で、体内で様々な重要な働きをしています。特に有名なのは、カルシウムの吸収を助け、骨や歯の形成を促す働きです。

「骨を強くする」と言えば、カルシウムを思い浮かべます。でも実は、ビタミンDがなければ、せっかく摂ったカルシウムはうまく吸収されません。

 

でも、ビタミンDの役割はそれだけではなく、近年、免疫機能の調整や、アレルギー疾患、糖尿病などとの関連性も指摘されており、その重要性がますます明らかになってきています。つまり、ビタミンDは、子供の健やかな成長と健康を守るための、いわば「縁の下の力持ち」なのです。

 

身長に関して言えば

・カルシウム吸収

・骨形成

・成長板の石灰化調整

等がビタミンDが関わるものとなります。

 

ビタミンDは日光でも作り出されます。

実はビタミンDの90%は日光を浴びて皮膚でつくられます。

残りの10%は食品から摂取でき、それらは以下の図になります。

 

結論としては日光浴+食事ですが、基本は太陽の下で活動してもらうという形になります。


4. まとめ:積極的に食べたい食材【保存版】

 

たんぱく質・亜鉛が豊富

・牛赤身肉

・豚ヒレ・もも

・鶏むね・もも

・卵

・納豆・豆腐

 

骨・ビタミンD

・鮭

・サバ

・イワシ

・しらす

 

カルシウム

・牛乳

・ヨーグルト

・チーズ

 

鉄・微量栄養素

・小松菜

・ほうれん草

・ひじき

・レバー(少量)


5. 成長を支える「料理」の考え方

ポイントは「一品で複数栄養素」

 

例①:鮭+きのこ+ごはん

・たんぱく質

・ビタミンD

・エネルギー

 

例②:豚肉+野菜炒め

・たんぱく質

・鉄

・亜鉛

 

例③:納豆ごはん+卵

・たんぱく質

・亜鉛

・エネルギー

 

「手の込んだ料理」より

“栄養の組み合わせ”が重要。


6. 結論として、3食の考え方

どれを一番食べるべき?

 

結論としては、朝と昼をしっかり、夜はやや軽めは一番お勧めされます

 

理由として、

朝:体内時計リセット+1日の代謝スタート

 

昼:活動量最大

 

夜:回復目的(食べすぎは睡眠の質を下げる)

 

あくまで提案ではありますが、最新論文を参考に考えていくと上記の流れとなります。

プラスアルファとして運動直後の補食が勧められます。


7. 補食(間食)は「成長の味方」

 

補食が必要なケースとして

・スポーツをしている

・食が細い

・夕食まで時間が空く

が挙げられます

 

しかしながら、実際問題とし、食べられるのも一つの才能というべきか、体質というべきか・・・

ということもあると思います。

低栄養の方にも食事指導として、補食(1日5食など)で3食分を小分けにしていくという形も可能です。

 

理想的な補食の例としては以下がお勧めされています

量の目安

・おにぎり1個(100〜150g)

・牛乳200ml

・果物1個

 

お菓子で代用はせず、あくまで「第4、第5の食事」と考えることが大切です。


8. サプリメントは必要か?

 

医療職としての意見として、サプリで身長は伸びない。

ということが結論です。

 

ただし、不足栄養を補う意味は大いに期待できるところです。

サプリメントを飲んでいれば、プロテインを飲んでいればそれでOKかというと間違いです。

 

ただ、どうしても不足しがちな栄養素や好き嫌いで栄養が偏ってしまうのであれば、補う目的に摂取することは推奨されます。

これだけやれば身長は伸びる!ということはありません。

 

総合的に考える必要があり、前回ブログでまとめた睡眠もしかり、栄養も含め総合的に考えていくことが大切です。

 

サプリメントやプロテインを使うなら

・食事が基本

・あくまで補助

・過剰摂取に注意

これらを理解した上で摂取頂くのが推奨されます。


9. よくある誤解

 

繰り返しとなりますが

・カルシウムだけ取ればいい

・プロテインを飲めば伸びる

・夜にたくさん食べればいい

 

これらは、どれもどれも不正解です。

 

成長を促す、ないし成長しやすい環境は

「量 × 質 × タイミング」

の総合結果です。


まとめ

身長を支える栄養の本質

 

・最優先はエネルギー不足を防ぐこと

・たんぱく質・亜鉛・鉄・ビタミンDが鍵

・3食+補食で1日トータルを満たす

・朝・昼重視、夜は回復目的

・サプリは補助、主役は食事

 

これらをしっかりとまもって我が子の成長につながりやすい体の環境にしていくことが大切です。


参考文献・国際的知見(抜粋)

Nutrients and linear growth in children (International Review)

Zinc deficiency and child growth (Meta-analysis)

Relative Energy Deficiency in Sport (IOC Consensus)

日本小児内分泌学会 見解


次回(シリーズ最終章)

 

第3回:成長曲線の読み方と「今すぐ受診すべきサイン」

 

をまとめたいと思います。

こうご期待くださいませ!

長文お読みいただきありがとうございました。